第42回 美味しい! 知る人ぞ知る、とんかつ「浜ちゃん」
テーマ:「駐在あれコレ」編 時間があればブラブラしてみるもので、打ち合わせを済ませてから会社への帰途、陽気に誘われて歩いてみた。会社の方向だけを頼りに、気の向くままにである。武定路―新開路―胶州路と歩いて通り過ぎざまに、「浜ちゃん」の店名が目に入った。一瞬、「あの店かな?」と思い戻ってみると、確かにとんかつのお店である。しかし、似たような名前もあるし…何よりその店の場所が分からなかった。会社に戻り名刺を見ると、やはりあの店で、以外に近いところで営業しているのに驚いた。
昨年8月、長楽路にある焼き鳥の店で浜ちゃんこと濱崎雅彦氏にお会いし、名刺を交換していた。この焼き鳥「福ちゃん」も日本人駐在員には大変な人気で、いつ訪ねても狭い店内は客で満席である。日本語が飛び交い一瞬、ここが上海であることを忘れてしまうほど味も確かだ。昔懐かしいしょうゆ味のラーメンがまた泣かせる。ラーメン食べたさに通うのだが、つい焼き鳥とビールに手を出す悪循環で、結局、ラーメンは2回しか食べていないのが残念。
話は逸れたが、濱崎氏が今の地に店をオープンさせたのは2004年の頃ではなかったか。ある雑誌で、日本人駐在員に支持されている飲食店の特集を企画した時、とんかつ「浜ちゃん」が一番に候補に挙がった。実際の取材は、K氏が行ったものだが、濱崎氏の経歴が私の脳裏に焼き付いていた。
もともと日本では設計技師のエリートとして活躍していた浜崎氏は退職後、10年以上も前から上海に来て2つの飲食業にチャレンジしたが、詐欺や裏切りといった「中国リスク」に遭遇。裸一貫になったことは上海では有名な話と言う。失意のどん底から一念発起、日本の味を守る決意を固めとんかつ店をオープンさせた。その味は口コミで広まり、正直、立地条件は決して良くはないものの、噂を頼りに日本人駐在員が訪れる店になったのである。
先週、突然思い立って店に足を向けた。地下鉄2号線静安寺駅の久光百貨店の裏手から北京西路を過ぎて5,6分ほどの胶州路にひっそりと佇む。とんかつの大きな文字がなぜか郷愁を誘う。午後1時を過ぎて客は一組しかいなかったが、落ち着いたシックな内装が濱崎氏の日本の味を守る信念を感じさせるような気がした。とても柔らかい肉に自家製ソースが絶妙にマッチし、口中に日本の味が広がっていく。味噌汁、漬物と日本にいる時と少しも変わらない味に大いに満足。否、上海で味わえるからこそ、さらに大満足する絶品だった。シェフオーナーの濱崎氏にお会いするのも忘れ、日本の味を堪能させてもらった。次回は濱崎氏にお会いしようと思う。
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